少年法・少年犯罪にフォーカスしたこの作品。被害者家族、加害者家族の思いや人生、無責任に攻撃的な世間。もやもやしたりすっきりしたり、感動も悲しみも喜びも怒りも、すべての感情が揺さぶられる作品です。「動き続けること」「すべて吹き飛んでしまえ」「スノードロップ」…一時はTikTokでも話題になったらしいこの小説。読了したので、紹介したいと思います。
作者、作品について
・松村涼哉
大学在学中に応募した『ただ、それだけでよかったんです』が、第22回電撃小説大賞≪大賞≫を受賞しデビュー。閉塞した教室のヒエラルキーと、少年少女たちの孤独な闘いを描いた同作は、重版を重ねたヒットを果たす。他著に、『おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界』『1パーセントの教室』(電撃文庫)がある。
・初版:2019年3月23日
・あらすじ:
衝撃と感動が突き刺さる、慟哭のミステリー
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「すべて、吹き飛んでしまえ」
突然の犯行予告の後に起きた新宿駅爆破事件。容疑者は渡辺篤人。たった15歳の少年の犯行は、世間を震撼させた。
少年犯罪を追う記者・安藤は、渡辺篤人を知っていた。かつて少年犯罪被害者の会で出会った孤独な少年。何が、彼を凶行に駆り立てたのか?進展しない捜査を傍目に、安藤は、行方をくらませた少年の足取りを追う。
事件の裏側に隠された驚愕の真実に安藤が辿り着いたとき、15歳のテロリストの最後の闘いが始まろうとしていたー。
【引用】本裏面より
参考文献について
本著の”あとがき”部分に、この作品を書くにあたって参考にされた本などが記載されていました。
『話を、聞いてくださいー少年犯罪被害者当事者手記集』
『少年法入門 第6版』
『闇を照らすーなぜ子どもが子どもを殺したのか』
『少年犯罪と少年法 被害者の声を受け止める司法へ』
『加害者家族』 等
特に一番上の『話を、聞いてくださいー少年犯罪被害者当事者手記集』は、執筆中に何度も読み直されたといいます。
参考にされた文献を読んでみることも、世界観をより濃く感じることができると思います。
また、少年犯罪や少年法に関心が高まった方は、これらの作品を読んでみることもおすすめです。
物語の始まり、読み続けたくなるか?(ネタバレ含む)
本著は、犯行声明から始まります。
これからどんな展開が待ち受けているのか?首謀者の少年は?テロの規模は?と思っているところで、別の少年事件の被害者家族と記者・安藤の対話に移ります。
そこで、少年犯罪の被害者遺族がどのような気持ちでいるか。安藤の存在が、遺族にとってどれほど重要か感じることができます。
そして続いて登場するのが議員・比津。少年法の改正に尽力する議員の一人です。
この二人の対話から、少年法の甘さを感じながら物語に徐々に引き込まれていきます。一見すると難しい内容なのではと感じてしまいますが、案外そうでもなくて理解しやすいように話を展開させてくれています。
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話の展開、読みごたえは?(ネタバレなしバージョン)
ずばり、読みごたえはあり!
内容は比較的ヘビーなのに、どんどん展開していくので次へ次へと読み進めたくなります。
ちなみに私の友人は3時間で読了したと話していました。
ヒリヒリする話の展開と、怒りに似た感情のお陰でどんどん読み進められてしまいます。複数いる登場人物のうち、誰かしらには自分か友人知人、家族を重ねることが無意識的にできてしまうので、感情移入しやすいです。
そのくらいの年齢の時どうだったかな…そんな不良もいたな…あの子も、私も、一歩間違っていたらこういうことに巻き込まれていたのかもしれないな…など、ぐんぐん引き込まれていく要素はたくさんちりばめられています。
自分が親になって子供を持ったら…こんな危険が近くにはらんでいるかもしれないのか…など、思わず想像してしまいます。
話の展開、読みごたえは?(ネタバレありバージョン)
この小説の面白いところは、時系列をはっきりさせない・時系列順ではない、ということです。
読みごたえがある順といいますか、この順で話を理解していったらより面白く読むことができるという順番だったなと読んでいくうちに思いました。
読んでる途中「ん?これはいつの話?」と思ったこともありましたが笑、色んな方面でそれぞれの動きをしていた人たちが徐々に重なってきて。それぞれの目的を達成させるために集結してくるような、そんな感じ。
読んでいくとだんだんと納得していきます。それも引き込まれる要因の一つです。
なにを目的としたテロなのか?犯行声明なのか?
読んでいくと、「お、これは複線か?!」と思うものもいくつか出てきます。大外れしたものもありましたが、どんぴしゃりで出てくると本当にうれしい。再登場の仕方は想像を超えてくるもので、それもまたいい意味で裏切られたなと。
この小説を読んでほしい人は?
今まで、平和に穏便に生きてきたなって感じているそこのあなた!ぜひ手に取ってみて下さい。
生きてきた中で、誰でもいじめを目の当たりにしたり対象になったことはあると思います。その当時はつらかったけど、でも今はこうして”普通”の生活ができている。そんな方にこそ知っててほしい感情や思い、経験が詰まっています。
今までの人生つらい・むかつくと思うことはたくさんあったけど、どれもこれも適わない。
自分の人生では今まで経験することがなかったけど、それでも身近に潜んでいる危険性について、知っておくことは大事なんじゃないかなって。
自分がいつか親になったり、友達が親になったり、そんな時、少年犯罪・少年法について知っていて損はないし、その学びのきっかけにきっとなってくれると思います。
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なにがいいことで何が悪いことなのか、正義は、真実は…この本薄さでこの内容…好みすぎて勧めてくれたお友達に大感謝です。
皆様も、おすすめの小説があったらぜひ教えてください🙈🤍
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